語りかける風景**風景画の法則を発見
Posted on 6月 24, 2010
『語りかける風景 コロー、モネ、シスレーからピカソまで ストラスブール美術館展』を見てきた。
風景画……過去の遺物かと思っていったが、非常にわかりやすい発見があって楽しめた。
風景画は、一つの絵の中に大まかに近景、中景、遠景がある。
これの描き分けが画家の一つの見せ所となる。
それから空と雲。
光。
それから魅力的なモチーフ(船や古城や樹木、人物などの対象)と画面構成。
古典的な風景画には、上記のものが揃っている。
何かが欠けているのは、画家が何らかの美術的な野心、イデオロギー、風潮に染まっている場合である。
風景を描くときには、上記についてのアイデアをよく練って、それからすっかり忘れて描くのがいいだろう。
もう一つ驚いたことは、僕はあまり展覧会で座らないのだが、今回、ひょいと座ってみると、先ほどの近景、中景、遠景の絵の奥行きがよりよく理解できた。壁に飾れば、部屋が広く、また別の世界に広がっているように感じられるだろう。
ちょうど窓からよい景色を眺めているようだ。
だから、風景画の空間を広く感じさせる作用は、大きい絵ほど大きい、という単純な部分がある。
絵画のこのような効用があれば、狭い日本家屋にも絵画を飾る理由になる。
肖像画などでは、たぶん逆に人物がこちらに訴えてくる分だけ空間は狭く感じるのではなかろうか。
このような風景画の作用が日本人の描く風景画にもあるか、と考えたがよくわからない。少ない経験ではあまり感じたことがない。
唯一思いだすのは、子どもの頃に行った銭湯の湯船の上に描かれていた絵である。
富士山があり、湖に帆掛け船が浮かんでいる。その手前に松林があるというような絵であったと思う。
子ども心には、それでしばしの時間、知らない世界に飛ぶには十分であった。
日本人は風呂好きであり、そこでのんびり和もうとする人が多い。
そして、日本家屋には、絵を飾るのに十分な壁面が少ない。
お風呂に飾る富士山の絵を描くのはいいと思う。
湿気や熱に負けない素材は何だろう。
新しい日本の風景画が始まる。
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『語りかける風景』 Bunkamura ミュージアム 7月11日まで
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/shosai_10_strasbourg.html
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